慟哭 18話
総司は、慎重に男たちの動きを確かめながら後ずさった。
左右から、男たちがじりじりと近寄ってくる。
男たちの気配を感じ取りながら、セイを自分の後ろに隠すように下がらせた。
いきなり切りかかってきた1人を、総司は軽やかに切り倒した。
すぐさま同時に飛び掛ってきた男たちを、セイを守りながらも切り倒していく。
しかしいつものようにはいかない。
総司に向かって切りかかってきた男の刀を、総司は何とか受け流した。
それでも男は総司に向かってくる。
セイを守りながらという不利な状況では、総司は相手の剣を受け止めるのがやっとだった。
どうすればいい
総司は焦っていた。
1人の男の刀を受け止めながら、腹を蹴った。
そして、切りかかってきたもう1人の男を相手にしようとした時、先ほどの男がセイに向かって切りかかろうとした。
それを目にした総司は、自分に向かってきた男の存在を一瞬忘れた。
しまった!!!
気づいた時には遅かった。
間に合わないと総司は思った。
「うあぁっ」
覚悟を決めたその時、男がうめき声を上げて倒れた。
何が起きたのか、考える暇もなく残りの1人の男を総司は切り倒した。
すぐにセイを振り向くと、いつの間にか自分の腰から抜かれた脇差を持ったセイが、呆然と立っていた。
「神谷さんっ!!」
セイに近寄り、顔を覗きこむ。
「あ、あなたが?」
蒼白になった顔をしたセイは、倒れた男に落としていた視線を総司に向けた。
「っ!」
その瞬間、総司はセイを抱きしめた。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
総司は抱きしめた腕に力をこめてセイに尋ねた。
「・・・はい」
嫌がる様子もなく、セイは小さく答えた。
しかしセイの体は小さく震えており、呼吸も荒い。
総司は、はぁっと安堵の息を吐いた。
セイが斬られる。
そう思った瞬間、心臓が止まりそうになった。
セイが男に斬りかかられそうになったのを目にした瞬間、自分の状況など頭から吹っ飛んだ。
これまでも、仲間や大切な者が何人も命を落としてきた。
もちろん悲しみは感じるし、失いたくないとも思った。
しかしそれとは比にならない程の感情が、総司の中に生まれた。
あぁ、そうか。
そういう事だったのか。
何故自分がこれほどまでにこの少女に執着するのか。
やっと気づいた。
土方や松本が何を言いたかったのか。
全て理解した。
自分にとって、セイは誰よりも大切で誰よりも愛しい存在だったのだ。
「あなたが無事で、本当に良かった」
総司は、セイの首元に顔を埋め心の底からそうつぶやいた。
「沖田先生が・・・」
「え?」
「先生が斬られると思ったら、勝手に体が動いていました・・・」
セイの発した言葉に、驚いてセイから体を離した。
「神谷さん・・」
総司がセイの名を呼んだとき、セイの手から刀が落ちた。
そしてセイはその場に座り込んでしまった。
「神谷さんっ」
慌てて総司はセイの体を支えようとした。
しかし顔面蒼白のセイは、総司の手を拒んだ。
「大丈夫ですか?」
セイの目の前に総司も座り、セイを心配そうに覗き込む。
「私・・ また殺してしまいました・・」
何も見えていない、うつろな瞳を宙にさまよわせた。
「え?」
意味が分からず、総司は聞き返した。
「私・・ 殺してしまったんです。 3人も・・・ もうこんな事したくないって思ったのに・・・ やっぱり私は・・・」
セイが発した言葉を聞いた総司は、ハッとなり口をつぐんだ。
「私は殺してしまったんです。 新撰組の隊士を・・・ 3人も仲間を殺したんです」
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