慟哭 13話
「おセイちゃん目が覚めた?」
目を覚ますと、心配そうに自分を覗き込んでいる里の顔があった。
「お里さん・・・」
何が起こったのかぼうっとする頭で考えた。
「気分悪あらへん?」
起き上がろうとしたのを制して、里は優しく訪ねた。
「ううん、大丈夫。 私どうしたの?」
里にそう尋ねた瞬間、里とは別の気配を感じ、そちらへ顔を向けた。
「!」
部屋の端に所在なさげに座っている総司がいた。
セイの顔がたちまち強張る。
総司は、困ったような顔をしたままセイに近寄ろうとはしない。
セイは里にすがる様な目を向けて助けを求めた。
「おセイちゃん。 沖田せんせはずっとここでおセイちゃんの事看ててくれたんよ」
セイの気持ちをすぐに理解した里は、セイに状況を説明した。
「おセイちゃん・・・ せんせはうちらと同じおセイちゃんの味方やし。 何も心配する事はあらしません」
それでも、セイの表情が緩む事がない。
「ちょっと松本せんせにおセイちゃんが目覚めたて伝えくるさかい、待っててくれるやろか」
そう言いながら立ち上がった里の裾を握り、セイは微かに震えながら首を横に振る。
里は、その手をそっと離した。
「心配あらへん。 すぐ戻りますさかいに」
そしてセイから離れ部屋の戸に手をかけた。
里は総司を振り返り、微かに頷くとそのまま部屋を後にした。
部屋には重たい沈黙が流れる。
「だいじょうぶ・・ですか」
総司は、おずおずと話しかけた。
当然ながら、セイは反応せず目も合わせようとしない。
総司は少しセイの方へ身を乗り出した。
その気配を感じたセイは、布団の中でビクッとなる。
それに気づいた総司は、またもとの場所に座り直した。
「ごめんなさい・・ これ以上は近づかないので安心してください」
遠目からでもセイの体が強張っているのが分かる。
総司はそれを見て、悲しくなった。
以前までは、こんな事は1度もなかった。
誰よりも近くにいたはずの自分が、今セイの事を苦しめているのだ。
「神谷さん、あなたは望まないかも知れない。 でも、私はあなたの力になりたい」
そこまで言い、セイの反応を伺う。
「自分でも何故こんな風に思うのかが分からないのですが、あなたがこんな状態でいるのをどうしても放っておけないのです」
こちらに背を向けて寝ているセイに、ゆっくりと語りかけた。
「あなたが今どんな生活をしているのかは分かりません。 でもあなたさえ良ければ、私が借りる部屋へ移りませんか? 何かあればすぐにでも駆けつけられるように屯所の近くに住んでもらえれば私も安心です。 もちろんお里さんやまー坊と一緒で構いませんよ。 生活なら私が見ます」
一旦言葉を切り、ふうっと息を吐いた。
「今すぐとはとは言いません。 あなたが良いと思えるまで待ちます。 これは全て私が勝手に言っている事だから、どうしてもあなたが嫌だと言うなら無理強いはしません。 でも、これからはちょくちょく時間が空けばあなたの様子を伺いに行きます。 それだけでも了承してくれませんか?」
総司は懇願するようにセイに尋ねた。
セイが震えている。
少し呼吸も荒くなってきた様だ。
総司は心配になりセイの元へ駆け寄った。
「神谷さんっ!?」
咄嗟にセイの方に手をかけた。
汗をかいて、しっとりしている。
「大丈夫ですか?」
総司はゆっくりとセイの背中をさすってやった。
自分が触れる事は嫌かも知れないと思ったのだが、あえて総司は止める事をしなかった。
次第にセイの呼吸が落ち着いてくる。
「落ち着きましたか?」
優しく語り掛ける総司に、セイはゆっくりと頷いた。
総司は安堵のため息をついた。
そして、同時に嬉しく感じていた。
自分を避けて拒絶していたセイが、自分の問いかけに答えてくれた。
「では私はもう行きます。 後の事は法眼とお里さんにお願いしておきますから。 また、顔を見に来ますね」
そういうと、総司はその場に立ち上がった。
戸を開け、部屋を後にしようとした時。
「ありがとう・・ ございました」
微かにセイの声が聞こえた気がした。
驚いた総司は、セイに振り返った。
しかしセイはこちらを見ていない。
気のせいだったのか。
「ではまた」
そういうと、部屋を出た。
先ほどのは聞き間違いなどではないだろう。
総司は口元に笑みを浮かべると、歩き出した。
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