慟哭  12話




「極度の緊張を受けた事で、こうなっただけだ。 一時的なもので心配はいらねぇ」
セイを見ている松本は、隣で心配そうに見つめている総司に伝えた。
それを聞いた総司は、はぁっと安堵のため息を吐いた。

「極度の緊張と言うのは・・・ やはり私の責任でしょうか」
セイが無事だった事には安心した総司だったが、セイが倒れた理由が自分だという事を薄々感じ取り少なからずショックを受けた。
「あぁ・・ 突然自分の目の前に避けていた人物が現れて、あれこれ話しかけられれば仕方ねぇだろう」
松本も、総司をセイの元へ送り込んだ張本人として少なからず責任を感じていた。
「そうですか・・・」
悲しそうにセイを見下ろす。

「・・・・で、どうする?」
セイを見つめている総司に、松本が尋ねた。
「え?」
「今日こいつに会って分かっただろう。 もしかしたらこいつはずっとこのままかも知れん。 心底ではお前を求めていても、例の件がある限り今後も拒否し続けるかもしれねぇ」
「・・・・そうですね」
「無理だと思うなら、諦めても構わねぇんだぞ」
松本は総司の顔を見ないまま、残念そうに総司に言った。

総司は、しばらく松本の顔を見ていたが、再びセイに視線を落とした。

青白い顔をして寝ているセイ。
以前は鍛えられて健康的だった体が、今はこんなに痩せ細ってしまっている。
寝顔もどこか不安そうな表情をしている。

自分にこの人を本当に立ち直らせる事が出来るのか。
先ほどのセイとの会話を思い浮かべると、総司の中に不安がよぎる。
しかし、自分の元からセイの存在を消す事がどうしても出来ない。
それにこんな状態のセイを知ってしまっては、これ以上セイの事を放っておく事など出来ないだろう。

「松本法眼」
「何だ」

総司は決心したように松本の目を見た。
「神谷さんは、私にとってはもう家族のような人です。 この人がこのような状態になっているのを見て放っておく事など私には出来ません。 この先、どんなに神谷さんに拒まれようと、私は諦めません」
「しかし沖田。 こいつはちょっとやそっとじゃ元には戻らねぇぞ。 それでも良いのか」
松本は、厳しい眼差しを総司に向けた。
「大丈夫です。 自分の元からこの人が居なくなる事の方が、私には耐えられません」
きっぱりと言うと、再び総司はセイを見た。


「そういう感情を何ていうのか、お前は気づいていないのか」
「はい?」
苦笑いしながらそう言う松本に、総司はきょとんと松本を見た。
「まさか本気で家族とか言ってる訳じゃねぇだろうな」
ますます訳が分からず総司は首を傾けた。
「どういう意味ですか?」
松本が何を言いたいのかを全く理解していない様子の総司に、松本はため息をついた。
「いや、分からねぇなら良い。 そのうち嫌でも気づくだろうよ」
「???」
一体何を松本が言っているのか分からず、総司は不思議そうな顔で松本の顔を見た。

「俺はまだ用gが残ってるから部屋を出る。 お前はどうする」
立ち上がりざまに、松本は総司にたずねた。

「私はどうせ今日は非番なので帰ってもやる事はありません。 このまま神谷さんのそばに居ます」
総司の言葉に松本は微笑むと、「じゃあ頼む」と良い部屋を出て行った。



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