慟哭 11話
総司とセイは、近くの川原へやってきた。
本当なら、どこかゆっくり出来る茶屋にでもと総司は思ったのだが、今のセイが2人きりになる事を拒む事は分かっていた。
ここへ来る間、セイは総司と目をあわす事なくただ総司の後を静かに着いてきた。
総司も何を話して良いか分からず、時折振り返ってはセイの様子を確認するのみだった。
「痩せました・・・よね」
気まずい空気のまま、総司ははなしかけた。
セイは微かに反応するが、答えない。
「・・・・ごめんなさい、迷惑なのは分かってるんです。 でもどうしても神谷さんとちゃんと話がしたかったんです」
1度言葉を切りセイの様子を伺う。
しかし、セイは1点を見つめたままじっとしている。
「土方さんから、あなたが隊を出たことを聞いた時、心底驚きました。 今までずっと一緒にいた神谷さんが、突然いなくなるっていう事が、こんなに私にとって辛い事だったなんて分かりませんでした。
どんな理由があれ、神谷さんが自分の元からいなくなるだなんて信じられなかったんです」
総司は、静かに息を吐いた。
「先日あなたを見た時、まさかと思いましたよ。 こんな事本当は言いたくはありませんでしたけど、あなたの事を夢にまで見てしまいました。 あなたが何か不安をかかえているように見えて、いてもたってもいられなかった。 以前なら1番に相談してくれていたのにって何度も考えました。 何故今自分の隣には神谷さんがいないのだろうって・・」
そこまで言うと、総司はセイに向き直った。
「神谷さん」
「沖田・・先生・・」
総司が呼びかけたとき、セイが小さな声で総司の名を呼んだ。
「えっ? は、はい」
突然んお呼びかけに驚いた総司に、セイは感情のこもらない声で淡々と話した。
「何の相談もなく先生の前からいなくなったのは、申し訳ないと思います・・・」
セイは、ゆっくりと小さな声で話しだした。
セイの言葉を聞き逃すまいと、総司はセイへ耳を傾ける。
「でも・・・ 私はもう新撰組を出た人間です。 それに、今はもう女子として生きています・・」
「神谷さん・・?」
「だから、もう私の事は・・・ 忘れて頂けますか」
セイの言葉に、総司の胸がズキっと痛んだ。
「私は・・ あなたの力になる事は出来ませんか?」
総司は、喉に詰まりそうになった言葉を何とか発した。
「先生の力になって頂く事は・・何もありません。 新撰組に入ったことも自分で決めた事ですが、隊を出て生きていく事を選んだのも私です」
小さくて、弱々しい声でセイは話す。
総司は、何もいう事が出来ない。
「先生や新撰組の皆さんのご武運を心から祈っております・・」
そこまで言うと、セイはふらふらとその場に立ち上がった。
その様子を、総司はただ見つめている。
「きっと・・ もうお会いする事もないと思います。 どうかお元気で・・」
そう言うと、総司の顔も見ないままその場を去ろうとした。
総司は、なすすべもなくセイが去っていくのをただ見る事しか出来なかった。
「!?」
数歩セイが歩き出した所で、突然セイがその場に座り込んだ。
遠めにも激しく肩を動かして息をしているのが分かる。
「神谷さん!?」
総司は、慌ててセイの元へ駆け寄った。
セイの顔を覗き込むと、真っ青な顔で額には脂汗をかいている。
「だ、大丈夫ですか!?」
総司は、セイの肩に手を回した。
その手を振り払おうとするが、力が入らないのか弱々しくセイの手が空を切る。
「はぁ・・ はぁ・・ はな・・・して・・・」
「何を言ってるんですかっ! 早く医者へっ!」
総司は、セイを抱き上げようとした。
しかし、やはりセイはそれを拒もうとする。
「だい・・だいじょうぶ・・ です・・・」
そう言いながらも、セイの息はどんどん荒くなり顔色も悪くなっている。
「しゃべらなくても良いです。 嫌でしょうが、少しだけ我慢して下さい」
そういうと、総司はセイを抱き上げた。
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