慟哭  10話




もう何日こうしているか分からない。
暇を見つけては、セイが来るであろうこの場所にじっと座って会えるのを待つ。
しかし、セイは現れない。
それでも総司は根気良くセイが来るのを待った。

セイの為、自分の為。

このままでは自分の仕事にも支障が出る。
何のために新撰組にいるのだと自分を叱咤しても、やはり気を抜けばセイの事が頭をよぎる。


今日は1日非番なので、朝早くからこの場所へやってきた。
朝が早かったセイの事だ。
もしかすると、皆が起きだす前にここへやって来ているのかも知れない。

総司は、すっかり自分の指定席となった大きな石に腰をかけ、懐から朝餉代わりに持ってきた団子を取り出した。
あんなに美味しいと思っていた甘味は、近頃ではすっかり味を感じなくなっていた。



ふと何かの気配を感じた総司は、何気なく振り向いた。


「っ!」

そこには、会いたくて会いたくて仕方のなかったセイが、顔色をなくして立っていた。

「神谷さん・・」
そうつぶやくと、総司はその場に立ち上がった。

セイは、後ろへと後ずさる。

そんなセイを見て、総司はセイにそっと近づいた。

「神谷さん」

セイの元へやってくる総司を見て、セイは後ずさりをしながら総司から遠ざかろうとした。
そして、セイはその場から走り出した。

「待ってくださいっ!」
総司は、すぐにセイの元に追いつき腕を掴んだ。
「あっ」
腕を掴まれたセイは、小さく声を上げて怯えた目で総司を振り返った。
掴んだ手から、セイの震えが伝わる。

「あ・・ ごめんなさい」
総司は、思わず掴んだ手を離した。
セイは、その場にへなへなと座り込んだ。

「すみません・・ どうしてもあなたと話がしたいと思ったので・・」
セイを見下ろしながら、申し訳なさそうに総司が言った。
セイは、座ったまま見て分かるほどに震えている。

セイに会いたかった。
会って話したかった。
なのに、いざこうして会ってみると何を話して良いか分からない。

総司は、セイの目の前に屈んだ。

「すみません、怖がらせてしまって・・・」
セイの顔を覗き込むが、決して目を合わせようとはしない。

「あの・・ 少し話せませんか?」
セイは答えない。
総司はセイの反応を待った。
自分に向けられる事のないセイの目をじっと見つめる。


「神谷さん・・・?」

それでもセイの反応はない。

どれほどの時間こうしていたか分からない。
「ダメ・・・ですか?」
どうしてもセイと話たい。
その為に何日もこの場でセイを待っていたのだ。
もし今日このままはなれてしまえば、もしかしたら警戒して二度とここにはやってこないかもしれない。
しかし、これ以上セイを苦しめる訳にはいかない。
セイに拒まれれば、総司はそれ以上強くいう事は出来ない。

反応のないセイに、総司は諦めて立ち上がろうとした。

その時。

「・・・です・・か」
小さな振るえる声をセイが発した。

「え?」
総司は、自分の耳を疑った。

「お話って・・ 何ですか」

「良いんですか!?」

総司の問いに、セイはゆっくりと頷いた。








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